「整理解雇」日米の違いと4つの要件

イ―ロン・マスク氏が米ツイッター社を買収し、同社の業績不振を理由に、従業員の半数を解雇したとの報道がありました。このように経営上必要とされる人員削減のために行う解雇は整理解雇と呼ばれます。マスク流の整理解雇は日本でも認められるでしょうか。日本では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、法律上、無効となります。この点、整理解雇は労働者の責めに帰すべき事由による解雇でないことなどから、より厳しく判断されます。

経営上必要とされる人員削減のために行う整理解雇には、従来、多くの判例により、4つの要件を充たす必要があると解されていました。4要件とは、①人員削減の必要性があること、②解雇を回避するための努力が尽くされていること、③解雇される者の人選に合理性があること、④解雇手続きの妥当性があること、です。
例えば、①については、近時の判例では、経営判断を尊重する傾向がありますが、人員削減の必要性を裏付ける証拠の提出等は当然に必要とされます。

整理解雇が有効となるには、上述の通り4要件をすべて満たさなければならないと解されてきましたが、近時、裁判例は、4「要件」を4「要素」と解して、それらに関する諸事情を総合判断して有効性を判定する傾向を示しています。これは、整理解雇規制について、部分的に緩和したともみえそうです。しかし、4要素説においても、それぞれの要素に問題がないかの主張立証が厳しく求められ、問題があるとされれば、整理解雇は無効と判断されることには変わりありません。

米ツイッター社の整理解雇は、仮に日本の裁判所で判断されたら、整理解雇の4要件(要素)に照らして無効とされると思われます。しかしながら、同社の整理解雇が暴挙であるとは即断できません。雇用契約に関する原則は、日米で異なり、米国では期限の定めのない雇用は、当事者双方が自由に解約できるとされています。一方、日本でも、人材の流動化を求める社会的な要請が強まっています。解雇について金銭解決の制度を導入する動きも出てきました。過渡期です。

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